小田達郎建築設計室-ブログ

2016.08.26 建築の知識

玄関にこだわっていますか?

建築家の目線から『家を建てる前にぜひ知っておいて欲しいポイント』をまとめました

『三重・四日市の皆様を中心に住まいの情報をお届けするシリーズ』として

友人・知人に質問された、住まいの素朴な疑問や注意点について記事にしています。

専門家からのアドバイスとして、ご活用いただけると幸いです。

 

 

意外とおざなりにしがちな玄関 ~玄関にこだわっていますか?~

今回のテーマは、『玄関にこだわっていますか?』です。

 

折角、家を建てるのであれば、皆さん細部までこだわっていきたいものですよね。

そのため、最近ではネットの普及によって、様々な部分を入念にチェックする人も多くなっています。

 

しかし、材料や工法の調査は数値化できるため分かりやすく、調査しやすいのですが

使い勝手やインテリアなどを含めた『空間の質』については、使う人にとって評価が変わってしまうので

調査がしにくく意外とおざなりにしがちです。

 

住まいづくりの原点であり、住み始めてしまえば、最も重要であるはずの『空間の質』

今回は、その中でも重要な要素である『玄関』について書いていこうと思います。

 

 

内部と外部をつなぐ『家の顔でもある玄関』

玄関は、家の内部と外部をつなぐ空間であり、家の顔とも言われています。

また、プライベート空間である内部と、パブリック空間である外部とを分ける境目であり

外から見たときと中に入ったときの2通りの違った印象があります。

 

 

まずは、プライベート空間である『内部』から見ていきましょう。

 

玄関の内側は、プライベート空間としての機能があり、家族全員が毎日使う場所なので

靴や傘をはじめとしてコート掛けや掃除道具まで、日々の生活がにじみ出てくる場所です。

ですので、どうしても利便性が求められてきますが、玄関の効果はそれだけではありません。

 

たとえば、皆さんが、他所の家の玄関に入った時に、玄関の広い家は家全体も広く感じることはありませんか?

また、宅配便やちょっとした来客があった場合など、玄関までは人の目に触れることも多くあり

そこでの印象が家全体の印象につながっていくこともあると思います。

 

このように、玄関は来客者に強い印象を与えることもある場所なので

少し考えた設計が出来ると、家全体の印象も変わってきます。

 

玄関設計の基本は、シンプルで広いスペースを取ることで、来客者に良い印象を持ってもらうようにするのですが

その際の準備として、家族の靴の数や必要なモノの数をチェックすることが最も重要になります。

経験上、家族によって必要な収納の量は、倍以上変わってきます。

特に玄関はその差が顕著に表れ、ムカデのように靴を持っている人もいれば、数足でこと足りるという人もいます。

 

意外と普段、自分が持っているモノを人と比べることがないので、何も考えずに玄関を設計すると

靴があふれてしまったり、傘立てが邪魔になってしまったりすることもあるので、注意が必要です。

 

プラン上は、狭くても出来る限りシュークロークを設けることが原則ですが

どうしてもクロークが取れない場合は、間接照明を仕込んだ収納を作ると

収納箱が装飾品と認識されるので、空間がすこし面白いものになるので試してみてください。

 

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外部と同じタイルが使用され空間が続くようにしてあり、収納は間接照明によって浮いているように見えます。
また、昼間は上部の窓から柔らかな光が差し込み玄関空間を演出します。

 

 

次は、パブリック空間である『外部』です。

 

玄関は、外から見たときの家の印象に大きな影響を与えます。

そのため、家全体のイメージと玄関のデザインが合っていると、非常に洗練された家に見えます

その一方で、家と玄関のデザインがマッチしていないと

非常に違和感の残るイメージを持たれてしまうこともあるでしょう。

 

それだけに、玄関には、機能だけでなくデザインにも気を配る必要があります。

 

そこで、玄関の見せ方の一つとして、玄関部分を塀や植栽で隠してしまい

外から見えないようにするという手法があります。

この手法は、外から玄関が見えないので、家全体のデザインを統一させやすくなりますし

玄関の扉を開けた瞬間に、外から家の中をのぞかれる心配もなくなるので、機能的にも有効です。

 

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植栽や石板のベンチを配置することで、目隠しの塀がそっけないものにならないようにしています。

 

このように、玄関は、生活の要所であるのと同時に、家全体の印象を大きく左右させる場所でもあります。

家を建てるときには、玄関は顔と考えて、家のイメージにあったデザインになるように工夫してみましょう。